個人投資家の台頭

近年、日本の株式市場では個人投資家が急激に増加してきた。個人投資家をマーケットシェアで見てみると３０〜４０％台となり、２０００年頃と比較しても１．５倍〜２倍程度増加しており、個人投資家は市場の流動性の一端を担う重要な存在として無視できない存在となっている。
また、２００３年頃から、急激に個人投資家の市場へ流動性提供が高まるにつれて、機関投資家の間でも個人投資家の流動性が受け皿となり、ポジションのリバランスが以前より楽になったなど取引環境の変化を感じているようだ。
このように個人投資家が台頭してきた要因としては、インターネットの普及や１９９９年の証券手数料自由化、オンライン取引を可能とした金融商品取引業者の出現による簡素な取引環境の提供などの要因が上げられる。また、近年は好調なマーケットもそれを後押しし、ネット取引を手段とした個人投資家の急激な増加を手助けしている。

ネット取引のメリット、デメリット

インターネットの普及により情報を得る手段が変化したことや株式のオンライン取引が可能となったことで、いつでもどこでも取引が可能となった個人投資家の取引スタイルは、多様化し複雑化している。
そのため、投資家は変化した環境に対応するためにネット取引を取り巻く環境のメリットやデメリットを理解して頂く必要があるだろう。

「ネット取引環境のメリット」

・多くの情報を容易に得ることができる

インターネットの普及により、投資判断に必要な知識や情報が多くデジタル化され、それを得ることや利用して投資判断を行うことが容易になった。

・情報をリアルタイムに得ることが可能

ブロードバンドの普及によって、チャートや板情報などを利用して株価情報をリアルタイムに得ることが可能となり、取引時間内に、より正確なマーケット情報を得ることができる。

・自分のペースで取引が可能

インターネットに接続できる環境であれば、パソコンや携帯などのモバイル端末から金融商品取引業者にアクセスし、自由に取引や注文が可能。

・取引コストが安い

１９９９年の証券手数料自由化、オンライン取引が行える金融商品取引業者の手数料競争の末、投資額に対する取引コストの割合が低下。

・多くの情報を容易に得ることができる

インターネットの普及により、投資判断に必要な知識や情報が多くデジタル化され、それを得ることや利用して投資判断を行うことが容易になった。

・短期的な取引が可能

投資額に対する取引コストの低下と同様に、リターンに対する取引コスト割合も低下したことで、小さなリターンを積み重ねるデイトレードのようなアクティブな短期的取引が可能。

・投資判断から実際の取引が簡素化

金融商品取引業者の担当社員を介さず、リアルタイムの株価情報を得て実際の取引を全てパソコンやモバイル端末でスムーズに完結することが可能。

「ネット取引環境のデメリット」

・システムリスク（ネットワーク、金融商品取引業者、取引所、PC、ご操作）

ネット取引に必要な投資家のパソコン、モバイル端末、インターネット回線や金融商品取引業者、取引所などのネットワークやシステム上の障害、データの遅延などが起こる可能性がある。その場合、投資家は取引機会利益の喪失などのリスクを被る。

・自己運用のリスク

ネット取引によって自分のペースで取引が可能な反面、長期間安定的かつ有益な投資活動を行うためには、相応の知識や技術が必要となり、自身で一貫した投資スタイルを構築しなければならない。

・心理的リスク

ネット取引による完全自己責任での投資活動では、知識や技術に加えて心理面のコントロールを必要とする。特に実際の取引局面においては、自身の投資判断やポジション（保有銘柄）に対する心理作用が実際の行動に現れるため、心理戦にならないように自己管理が必要。
このように、ネット取引は投資家の取引手段の簡素化を実現し、タイムリーな情報を実際の取引に活かすことが可能となるなど、投資家の資産運用の手段として非常に革新的である。そして、投資家にとっては、何より手数料などの取引コストが安価になったことで以前よりも有益な投資環境が提供されたことは喜ばしいことだ。

しかし、そのように取引手段が多様化し、投資家の自由度が増したことを全てメリットとして捉えることは危険である。ネット取引はアクティブな取引が可能なため、各々の投資家の行動によっては、本来目的としていた安定的な投資や運用が無意識的に変化し、結果的に単なる投機やギャンブルになることもある。
前提として、リスクマネジメントや運用管理を自己責任で行うことを必要条件であると意識して頂き、自身が思い描く資産運用の手段の一つとして、ネット取引を有益に活用して頂きたいと思う。

• 第2回

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